神の声

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「神様の声で救われた」 とある人物はそう語る。 神様のお陰で、悪事に手を染めずにすんだと。 「はははっ!」 燃えるような長い赤い髪をした少年は爆笑する。 「何故笑う? レイモンよ」 赤い髪の少年を短髪の黒髪をした少年は首をかしげる。 「だってさ、だってさ! 考えてみろよ、クレアル。 俺たちの声で人間救えたら人間界に争いなんてないんだぜ? アホくせぇ」 赤い髪のレイモンは、金色の切れ長の瞳を見開いた。 「レイモン、クレアルは真面目よ?」 ブロンドのゆるやかなウェーブのかかった長い髪を下の方でまとめ、大きな金色の瞳をした少女はハラハラしている。 「ジェファもそう思ってるワケ?」 レイモンは少女をじっと見ている。 「どうかしらね」 ジェファと呼ばれた少女は大きな瞳をしたぱちくりとさせた。 「レイモンさん」 いきなりさん付けで話始めたクレアル。 「んだよ、何か不満かよ。 クレアルだってさ、内心そう思ってんだろ?」 クレアルを追求するレイモン。 「俺は………その……」 モゴモゴとクレアルは語尾を濁す。 「はっきり言ってやれよ、クレアル。 バカバカしいってさ」 手を叩きながらレイモンは笑っている。 「レイモンさん、ゆっくり後ろ向いて下さい」 クレアルはゆっくりとレイモンの背後を指差した。 「んだよ、敬語使いやがって気持ちわりぃな。 うげっ!」 振り返ると同時にレイモンは一歩下がった。 「随分、おしゃべりだな」 レイモンの目の前に背が高く筋肉隆々のダークブルーの短髪の男が仁王立ちしている。 三人の担任である。 「ライラ先生、いつからそこに?」 ライラの登場にレイモンはオドオドしている。 「「はははっ!」あたりからかな」 腕を組んでライラは笑ってるが目が笑っていない。 「序盤かよ! ハッしまった! つい、突っ込んでしまった」 ハッとしてレイモンは口を押さえた。 「まぁ、レイモンの気持ちはわかる」 コクリとライラは頷いた。 「だろ? 流石、ライラ先生!」 馴れ馴れしくレイモンはライラの肩に手を回した。 「通知来てるぞ」 ライラはごそごそと懐から何かを出した。 「通知?」 ライラの言葉にレイモンは不思議そうにしている。 「ゼウス様からだ」 そう言うとライラはレイモンに懐から出した封書を手渡した。 「俺みたいな見習いにか? 何々……はぁ?!」 内容を見てレイモンは驚きを隠せない。 「ほう」 ここで初めてライラも通知の内容を知ったようで驚いている。 「人間界にて修行すべし? って、俺らまだ学生だし可笑しくないですか?」 通知を見てクレアルは首を傾げる。 そう、彼らはまだ神様の養成学校に通う見習いなのである。 「言ってやれ!言ってやれ! クレアル!」 拳を掲げ、レイモンはブーブーと文句を言う。 「怒られるわよ、レイモン」 レイモンをハラハラと見ているジェファ。 「だからだよ」 レイモンの言動にライラはため息をつく。 「はぁ?」 ライラの言葉にレイモンは怪訝な顔をする。 「今のうちにそのひん曲がった気持ちを直して来いと」 ポンポンとライラはレイモンの頭を触った。 「やだ!」 レイモンはライラの手を払いのけプイッとそっぽを向く。 「全知全能の神、ゼウス様の命令は絶対だ」 ライラはぐいっと指を指した。 「わかったよ、行けばいいんだろ。 行けば!」 半分ふてくされ、レイモンはくるりと後ろを向いてい歩き始めた。 「行って人間の一人でも更正して来い。 健闘を祈る」 去っていくレイモンにライラは呑気に手を振っている。 「(明日は我が身。 クワバラ、クワバラ)」 レイモンの哀愁漂う後ろ姿を見てクレアルは合唱した。 ジェファは気の毒そうにレイモンを見送った。 ーー…… こうしてレイモンは渋々、人間界に行くこととなった。 ……ーー
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