1人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「神様の声で救われた」
とある人物はそう語る。
神様のお陰で、悪事に手を染めずにすんだと。
「はははっ!」
燃えるような長い赤い髪をした少年は爆笑する。
「何故笑う?
レイモンよ」
赤い髪の少年を短髪の黒髪をした少年は首をかしげる。
「だってさ、だってさ!
考えてみろよ、クレアル。
俺たちの声で人間救えたら人間界に争いなんてないんだぜ?
アホくせぇ」
赤い髪のレイモンは、金色の切れ長の瞳を見開いた。
「レイモン、クレアルは真面目よ?」
ブロンドのゆるやかなウェーブのかかった長い髪を下の方でまとめ、大きな金色の瞳をした少女はハラハラしている。
「ジェファもそう思ってるワケ?」
レイモンは少女をじっと見ている。
「どうかしらね」
ジェファと呼ばれた少女は大きな瞳をしたぱちくりとさせた。
「レイモンさん」
いきなりさん付けで話始めたクレアル。
「んだよ、何か不満かよ。
クレアルだってさ、内心そう思ってんだろ?」
クレアルを追求するレイモン。
「俺は………その……」
モゴモゴとクレアルは語尾を濁す。
「はっきり言ってやれよ、クレアル。
バカバカしいってさ」
手を叩きながらレイモンは笑っている。
「レイモンさん、ゆっくり後ろ向いて下さい」
クレアルはゆっくりとレイモンの背後を指差した。
「んだよ、敬語使いやがって気持ちわりぃな。
うげっ!」
振り返ると同時にレイモンは一歩下がった。
「随分、おしゃべりだな」
レイモンの目の前に背が高く筋肉隆々のダークブルーの短髪の男が仁王立ちしている。
三人の担任である。
「ライラ先生、いつからそこに?」
ライラの登場にレイモンはオドオドしている。
「「はははっ!」あたりからかな」
腕を組んでライラは笑ってるが目が笑っていない。
「序盤かよ!
ハッしまった!
つい、突っ込んでしまった」
ハッとしてレイモンは口を押さえた。
「まぁ、レイモンの気持ちはわかる」
コクリとライラは頷いた。
「だろ?
流石、ライラ先生!」
馴れ馴れしくレイモンはライラの肩に手を回した。
「通知来てるぞ」
ライラはごそごそと懐から何かを出した。
「通知?」
ライラの言葉にレイモンは不思議そうにしている。
「ゼウス様からだ」
そう言うとライラはレイモンに懐から出した封書を手渡した。
「俺みたいな見習いにか?
何々……はぁ?!」
内容を見てレイモンは驚きを隠せない。
「ほう」
ここで初めてライラも通知の内容を知ったようで驚いている。
「人間界にて修行すべし?
って、俺らまだ学生だし可笑しくないですか?」
通知を見てクレアルは首を傾げる。
そう、彼らはまだ神様の養成学校に通う見習いなのである。
「言ってやれ!言ってやれ!
クレアル!」
拳を掲げ、レイモンはブーブーと文句を言う。
「怒られるわよ、レイモン」
レイモンをハラハラと見ているジェファ。
「だからだよ」
レイモンの言動にライラはため息をつく。
「はぁ?」
ライラの言葉にレイモンは怪訝な顔をする。
「今のうちにそのひん曲がった気持ちを直して来いと」
ポンポンとライラはレイモンの頭を触った。
「やだ!」
レイモンはライラの手を払いのけプイッとそっぽを向く。
「全知全能の神、ゼウス様の命令は絶対だ」
ライラはぐいっと指を指した。
「わかったよ、行けばいいんだろ。
行けば!」
半分ふてくされ、レイモンはくるりと後ろを向いてい歩き始めた。
「行って人間の一人でも更正して来い。
健闘を祈る」
去っていくレイモンにライラは呑気に手を振っている。
「(明日は我が身。
クワバラ、クワバラ)」
レイモンの哀愁漂う後ろ姿を見てクレアルは合唱した。
ジェファは気の毒そうにレイモンを見送った。
ーー……
こうしてレイモンは渋々、人間界に行くこととなった。
……ーー
最初のコメントを投稿しよう!