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幼き神は花畑に遊ぶ
ある日、私が住んでいる山に都の神の使いがやって来た。なんでも、久しぶりに新しい神が生まれたのでお祝いをするとのことだった。
久しぶりに神が生まれたと言っても、この国では神が新しく生まれるのは珍しいことではない。末席に位置するような神が生まれるくらいでは、こうやって知らせがくるようなことは基本的に無いのだ。
だから、此度生まれた神というのは、きっと我々八百万の神の中でも重要な役割を持っているのだろう。
都は、賑やかだ。人間が多いだけでなく、人間が集まっているが故にそこに住む神も多い。その賑やかさが苦手な私はどうしても距離を取りがちなのだけれども、久しぶりに生まれた重要な神に興味を持ったので、都に祝いの言葉を言いに行こうと、久方ぶりに山を出た。
私は、普段山に籠もっていて表に出ないため人間に知られることはほとんどないけれども、それなりに重要な役割を担っている。この国で取れる宝石や鉱物、そしてそれらの埋まっている鉱脈を司っているのだ。かつて人間が間違った使い方をした鉱物を全て神の元へと没収したこともある。それでも、人間は私の存在には気づいていないようだったけれども。
地の脈に乗って都へと向かう。人間と同じように地上を歩いて向かっても良いのだけれど、それだと時間が掛かりすぎる。着いた頃にはお祝いが終わっているなんて、招いた側も興ざめだろう。
都へはすぐに着いた。人間の都の裏側にある神の都。そこは色鮮やかで光に満ち、祝い事があるせいだろうか、行き交う神々は皆期待に満ちているようだった。
神の都の宮廷に入り、中を案内される。朱で塗られた何本もの柱は喜びで満たされていた。案内されたのは何十柱もの神が入れそうな広い板敷きの部屋で、沢山の食台が用意されていて、きっとここで宴をするのだろう。
賑やかなのは苦手なのだけれど。そう思ったけれど、ここですぐに帰るのも失礼だろう。私は端の方の席に座り、他の神々が席に着くのを待った。
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