異 人

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異 人

 先程の球体の中にいた女が幻次郎達の家の中で眠っている。幻次郎と咲は女を助け出すと家に連れ帰った。正直言うと幻次郎は得体の知れない者と関わる事に反対したのだが、このままほっておくことが出来ないという咲が半分強引に連れて帰ったような形であった。 「この出で立ち、忍びというヤツか。女であるならくノ一だな」幻次郎は刀の鞘で掛け布団を少し持ち上げて女の身なりを確認する。 「ちょっと何をやっているのよ!あんた変態なの!」咲は幻次郎の体を突き飛ばすと掛け布団を元に戻した。寝ている女の服装は、上下真っ黒のややツヤのある布で作られた衣服であった。幻次郎達の着ている着物とは、根本的に違うもののようである。それは幻次郎達が今まで見たことのない材質のものであった。体に張り付くような服で女のボディラインがすぐに判るような着こなしである。 「破廉恥な!あれか西洋の洋服というヤツか!?」幻次郎は先日、町からやって来た男にそのような物がある聞いたばかりであった。実際に見た事は無かった。  もう一度、注意深く女を見ると先ほど真っ黒に見えた彼女の髪の色は実際は少し赤みかかっており今まで目にした事が無いような色であった。その髪の色を幻次郎は美しいと感じた。。 「解った。この女は異人というやつだな」幻次郎は腕組みをしながら自分の知識を自慢するかのように呟く。ただし、彼も異人というものを見たことは無かった。 「異人?なにそれ?」咲は幻次郎の言っている意味が全く解らなかった。 「海の向こうのバテレンという連中だ。日本の神道を滅ぼそうとする奴らだそうだ」幻次郎は敵意丸出して寝ている女を睨み付けた。偏った知識と云うものは時として恐ろしいものである。 「ん、ううん……」女が目を覚ます。幻次郎は刀の(つか)を右手で握る。 「目を覚ましたのね、体は大丈夫?」咲は優しく女の具合を確認する。  女は一瞬警戒するように二人の顔を見たが、自分に危害を加える者では無い事を感じ取ったようであった。 「あ、あなた達は……一体!?誰!!」女は酷く警戒をしているようであった。 「覚えていないの?あなた空から丸い玉に乗って落ちて来たのよ」咲はそう言いながら彼女の肩に着物をかけた。 「それでは、あなた達が私を助けてくれたのですか?」女は幻次郎達を見つめる。  その瞳は彼らが見たことのない美しい深い(みど)の色であった。その瞳を見た瞬間、幻次郎はその女に美しい姿に心を奪われてしまっていた。
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