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南物語2
「最強十代って知ってる?」
俺は少年たちのアジトに案内された。
寂れた商店街の寂れた空き店舗。
そこの二階に少年たちのアジトがあった。
一〇人程しか入れない広さ。
テレビもソファーも冷蔵庫もある。
周りの商店街は空き店舗ばかりなのだろう。昼だというのに静かすぎる。
今、ここには三人だけだ。そんな時にこんな質問をしてくる。なぜ。
「聞いたことはあるけど…。あれって都市伝説じゃないの?」
「違うよ。本当に存在する。
東地区、西地区、南地区、北地区、中央地区、特別地区。この六地区をそれぞれ仕切っている六人のドン。そいつらは全員最強十代出身者なんだよ」
「全然意味が分からない」
「南地区の話をするぞ。
ブラザーフットは南地区不良界のトップ。そのブラザーフットのボスが南地区最強十代。ここまでは分かる?」
「あぁ。都市伝説は本当だったのは分かった」
「んじゃ続けるぞ。
南地区不良界のトップがブラザーフット。
そのメンバーたちが、そこからエスカレータ式に裏社会を仕切る事になる。それもブラザーフットが幅を利かせているこの地区だけじゃない。それは南地区全土に広がる。
お前の出身は?」
「第一地区」
「エリートか。もちろんそこにもいる。
五年ごとに最強十代が入れ替わる。それもブラザーフット内での慣例行事。
第一地区から第七地区まで、南地区全土をそれぞれの代のブラザーフットが仕切る。
つまり、南地区はブラザーフットに永遠に支配される」
「第一地区のお前には分からないと思うけど、十代からブラザーフットに仕切られているこの地区は最悪だぞ」
ボスと呼ばれている少年が笑顔で言った。
「そんな最悪のブラザーフットをぶっ潰してやった。そこで最強十代が入れ替わり、ブラザーフットの支配から解放されるかと思っていた」
「でも実際は変わらなかったのか」
「あぁ。元ブラザーフットとかいう奴らが俺らの所に来たぜ。
ブラザーフットに入らないか?だってよ」
「言ってきたな。
返り討ちにしてやったけどよ」
二人は楽しそうに話をしている。
「俺らがぶっ飛ばした奴らは逃げた。
後釜も決めずによ」
「そしたら治安が荒れに荒れてよ。今の十代のブラザーフットは壊滅状態。何個もグループが出きた。んで統制がとれないぐらいに荒れてんだよ」
やっと理由がわかった。
ただ、分からない事がある。
これを聞いても良いのだろうか。怖い。怖い。怖い。
昨日、一昨日の事を思い出すと、やはり怖い。
「何で俺を助けたんだ?
そんな状況の今。なぜ俺をアジトまで連れてきた?
敵であるかもしれない俺を。なぜ?」
建物の外から音が聞こえた。扉を開ける音だ。この建物に誰かが入ってきた。
足音がこの部屋に近づいてくる。
やはり騙された?
二人とも黙って俺を見ている。
扉が静かに開けられる。
俺はもちろん、二人も扉の方に目をやった。
もしかすると俺は今日、殺されるのかもしれない。
南第七地区。
俺たちはアウトフリーと呼んでいる。
自由の外。
引っ越してきて三日目。
これの意味が少し分かった。
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