雨のときの図書館へのいきかた

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 むすめといっしょの雨のときの図書館へのいきかたは京急にのって新馬場におりて北口から歩いていくコースである。そう、もう駅のエレベーターにむすめとのることも、さほどないものの、新馬場駅北口改札をでたところにあるエレベーターのアナウンスはなまっている。改札をでて、そんなエレベーターにものらず、商店街のない方の階段をゆっくり歩いていくと、高架の下にくる。すこしくらく、ハトのフンがある。公園などの入口にあって直進できなくするための自転車止めのエム字の鉄柵で通りにくくなっているものの、そこもやっぱり駐輪場になっていて、またその鉄柵のようなものがあって、通るとセブンイレブンのなかにはいり、すどおりして、別の出口からでると、第一京浜と山の手通りの大きな交差点となっている。家から鮫洲の駅まではもれなく傘をささねばならないが、ここで、ようやく傘をさすことになるものの、信号まちのときひだりはしによれば、また京急の高架下のためたすかる。青になり、信号をわたり、ひだりにおれればすぐにも高架はなくなり、傘をささねばならないが、もうすぐそこは図書館である。しかし、ここはたてもの、山の手通り、たてもの、目黒川、にはさまれていて、風がやたら強い。むすめの「きらい」なウィンディーである。傘をじょうずにななめよこにしつつ、図書館のきいろいふくろをわたしにもたせ、ぬれないようにしてじょうずに歩いていくも、ふたりのかたやズボンのすそのあたりは多少ともぬれるのである。  図書館につくと、むすめは、「ふう」といきをはいて、ほんのすこしの距離であるが、風雨をのりこえてきたことにほっとしている。むすめはすぐにも傘をくるんでほしそうにしているので、 「わかってるって」 といって、わたしがふたりの傘をたたんでくるりとまいて、かぎつきの傘おきばのわきにちょこんちょこんとただならべたてかけておいて、 「雨の日はだれもぬすまないから」 といっても、むすめはすこしだいじょうぶかな、と不安のようすを見せるも、ふたりでとことこ2階への階段をのぼっている。2階の入口に入れば、 「トイレだいじょうぶ」 「うん」 「知らないひとにはゼッタイついていかないでね」 「はい」 と、むすめはひだりの絵本のところ、わたしは右の雑誌書籍の方へそれぞれ向かう。それぞれがそれぞれのかりたい本をかりてきて、目をあわせたかのようにしてふたたび合流のあいはこびとなる。むすめは、 「トイレ、ひとりで、いってきた」 ともいっている。たまにはふたりして3階にいくこともあるし、わたしがふるい本をさがして検索しているところにきて、タッチパネルの画面をくいいるように見つめたまま、 「やりたい」 というときもあって、いつだったか、やゆよ、とふざけてうってむすめがけんさくのところをおすと、やゆよ、というだけでも、20冊ぐらい表示されたことがあって、ふたりして、 「すごい」 と感激したこともある。図書館のたのしさもいろいろであるとおもう、ふたりである。すこし階段をおりて、おどりばからおおきなガラスの向こうにはおおつぶの雨があたってふっているのが見えている。下の見えるおどりばのすきまからは傘おきばのとなりにたてかけてあるふたりの傘が見えているも、むすめからはどうやら見えないらしい。 「傘あるよ」 というと、よろこんでいる。そうして、おっこちてきている雨をふたりは見ている。  わたしも雨が好きで、むすめも雨が好きである。  わたしは本が好きで、むすめも本が好きである。  そして雨の図書館にふたりしてきている。そのまま鮫洲の家にかえるときもあれば京急にのって品川へでて買いだしするときもある。
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