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慌てて体を反転させてお尻を隠す、触った犯人は市松さんだった。
「何するんですかっ」
ブラシを剣のように構えて抗議したけれど、市松さんはニヤニヤ笑っている。
「いやぁ、いいケツ、してるなあ思って」
どこのスケベおやじですか!
「だからって触らないでくださいっ!」
「いいじゃない、女同士だし、減るもんじゃなし」
そういう問題じゃない!
「なんかさあ、スタイル良くなったんじゃない?」
そんなことを言って今度は胸を触ろうとする、私は本格的にブラシを防御に使った。
「もう、セクハラで訴えますよ⁉」
「訴える前に触らせて」
「いやです!」
本質を間違っている!
「女性ホルモン、出まくりね」
明るい声で割り込んできたのは遠藤さんだ、図面を描く手は止めない。
「お尻、ぷりんぷりん、だもんね、触りたくなる気持ちも判るわ。そのお尻の張り具合からすると、騎乗位、得意でしょ」
は⁉
「しかもウェストもそんなにきゅっとなってるのは、男性が女性任せじゃなく、ちゃんと動いて、女性もそれに合わせて上手に動いてる、まさしく乗馬の……」
「遠藤さん!!!」
待って待って、ここは真夜中の居酒屋か! 市松さんもほうほうとか感心して聞いてるし。
「えーもー、やだあ、藤代さんのエッチー」
どっちがですか!
「君たちはどういう話題で盛り上がってるんだ」
市松さんの追い打ちと、部長の声が重なった。やだ! 聞かれてるし!
慌てて見ると、部長は応接ブースへつながるドアから入ってきたところだった、そうCAD用のPCが並ぶエリアはそこに一番近い……部長のあとから入ってきた橋向係長も恥ずかしそうに……やだ、聞こえてるじゃん!
「まあ、藤代さんをいい女にした張本人が登場。真相聞かせてください!」
市松さんが飛び切りの笑顔で言う、しっかり否定してください!
「どうかな?」
部長も笑顔で答える、ええ! 部長、なんて思わせぶりなことを……! ほらあ、市松さんと遠藤さんの嬉しそうな「きゃあ」が……。
「もう、今度部長のお宅行くのが楽しみー! 土曜ですよね、行っていいんですよね!」
そう……結局、市松さんは部長に直談判に行っていた、当然私が相談なんかしていないのがばれて怒られたけど……部長も嫌がるかと思ったら、あっさりオーケーだった。
それが今週末──ボジョレー・ヌーヴォーの解禁に合わせて、パーティーでもしようと言うことになった。ボジョレー・ヌーヴォーを複数のワイナリーから20本以上を予約しているんだよね……係のみんなを招待したけれど7人しかいないのに、どれだけ飲むつもりなんだ。
「視察だ、視察!」
なんの視察をするつもりですか!!!
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