大腸さん

3/18
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/391ページ
 わたしも、別に家にいても何もすることがないので、彼女らと一緒に行動した。少しずつ唯が大きくなるにつれて、散歩の距離も伸びていった。  その日も、美穂さんはいつものように唯と一緒に散歩に出かけた。 「唯ちゃん。ちょっとママは用事があるので、今日は遠くまで行こうね」  薄いピンクのベビー服に、小さな白い帽子。小さな足に可愛いベビーシューズ。唯の身に付ける物全てが、こんなに小さいのかと驚くほどだった。でも唯の成長と共に、それもすぐにサイズが合わなくなってしまうのだろう。  こうして美穂さんたちの子育てを側で見ていて、本当に子どもを育てるのは大変だと思った。わたしは、少なくともここまで成長? したのだから、親にちゃんと育てて貰ったのだと思う。そう思いたかった。ただ、自分がその親の愛情に充分応えたのかどうかは自信がない。  あるいは、生前の記憶がないということも、そういったことに関係しているのではないのか。自分が死んだのは、もしかしたら、自ら命を絶ったのではないかと…………。  ベビーカーを押す美穂さんと、その側で一緒に歩くマイ。彼女らの後ろ姿を見ながら歩いていて、そんなことを取り留めもなく考えていた。  だから、周りの風景も目に入っていなかった。交差点で、信号待ちのために立ち止まった美穂さんたちと並んで立ち、何気なく前を見たときにそれに気がついた。
/391ページ

最初のコメントを投稿しよう!