51人が本棚に入れています
本棚に追加
猪迫さんが仕切りながら、ミーティングが始まった。
夜勤明けのスタッフからの報告、そして個々の入居者に対する注意事項。
今日の予定。唯たちは後ろの方で神妙に話を聞いている。
「それで、先日お話ししたとおり、今日は高校生の介護研修生が来ています。それじゃあ、ふたりとも前に来てくれる?」
猪迫さんが促すと、唯たちは硬い表情でみんなの前に立った。
「こちらが能瀬さんで、こちらが仁志田さん。今日から二日間、介護の仕事を頑張って貰います。能瀬さんと仁志田さん、何かわからないことがあったらスタッフに遠慮無く聞いてね」
まず唯が緊張した面持ちで、
「能瀬です。何もわからないことだらけですけど、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
と頭を下げた。
「仁志田です。よろしくお願いします」
さすがにふて腐れた表情を抑えた真由が頭を下げると、拍手が起こった。
「頑張ってね」
あちこちから声が掛かる。
「では、始めましょう。一日よろしくお願いします」
猪迫さんが言うと、スタッフが一斉に「一日、よろしくお願いします!」と唱和するように大声で答えた。
その大きな声に唯は驚いたのか、さらに緊張した面もちになる。
スタッフが慌ただしく出るのを見届けると、「さあ行きましょう」猪迫さんは笑顔でさっそうと歩く。
小太りの身体に、自信がはち切れんばかりに漲っているようだ。
最初のコメントを投稿しよう!