騒々しい幽霊、再び

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「はーあ。お腹すいた!」  猪迫さんが部屋から出て行ったのを見計らったように、真由が大袈裟にお腹をさする。 「ほら、能瀬さんここに座りなよ」  真由が自分の席の前に、唯の湯飲みを置く。朝とは打って変わって、やけに打ち解けた態度だ。 「…………うん」    唯は戸惑ったようだが、素直に席に座る。真由はさっさと自分のお弁当箱を開くと中身をぱくつき始めた。恐る恐る席に座った唯も、お弁当箱の包みをほどく。  しばらく無言で食べていると、唐突に真由が口を開いた。 「でも、老人の介護って大変だよね。今日の猪迫さんの話を聞いて、やっぱり介護って人が相手なんだっていうことがよくわかった」 「え…………うん」  面食らった表情で唯は顔を上げると、慌てて目を再び伏せて湯飲みのお茶を口に含んだ。 「ただ淡々と作業をこなせばいい訳じゃないんだよね。こっちもおばあちゃんたちが喜んでくれれば、嬉しいし」  唯はどう返事をして良いのかわからないようで、頻りにご飯を口に運ぶ。  唯に語りかける真由の顔を見て、この子案外悪い子じゃないのかも、と思った。  同じ仕事を通して、真由の中に唯との連帯感みたいなものが生まれたのかもしれない。残念ながら相変わらずぎこちない態度の唯だが、真由の態度や言葉は随分と和らいでいる。
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