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わたしはここがどこで、自分が誰で、そしてどうしてここにいるのかもわからない。
自分の名はもちろんのこと、年齢を思い出そうとしても、何も浮かんでこない。
自分の性別さえもわからない。
焦る気持ちに、パニックになりそうだった。
記憶喪失?
自分のことが何もわからない。
途端に、足に力が入らなくなり、思わず座り込んでしまう。
声から判断すると、どうやら性別は女のようだ。
目の前に自分の手のひらを翳してみる。
細く白い指と小さめの手。指輪などの装飾品は何も身につけていない。
服装を確かめようと下に目を向ける。上はTシャツに、下はハーフパンツ。
ハーフパンツには、ブランド名なのかロゴが小さく裾に付いている。
なんの特徴もない。
ハーフパンツの下から覗く足も白く細い。
何かが自分の髪に触れた。
顔を上げると、子どもがわたしの髪を触り、無言で見つめている。
何かを言いたげな白い顔は、やっぱり少し寂しそうに見えた。
『あなたは、この家の子?』
わたしが問いかけても子どもは無言だ。
子どもは、ネコのイラストが大きく描かれたTシャツにズボン。
Tシャツの裾の名前を書く欄に何かが書かれている。
わたしは子どものシャツに手を伸ばすと、その文字を指でなぞった。
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