51人が本棚に入れています
本棚に追加
なんでこんな所に?
突然の子どもの行動に、しばらく押し入れの襖をぼんやりと見つめていた。しばらく待ったが、子どもは出てきそうにもないので、押し入れの前に行き声を掛けた。
『ちょっと』
襖を開ける。
しかし、押入の中は衣装ケースがぎっしりと詰められていて、とても子どもが入るような隙間はない。
上の段は布団が積み重なっていたが、もちろん背の届かない子どもが上れるはずもなくその姿はない。
え? あの子は?
子どもが消えてしまった。
何がなんだかわからない。わたしは呆然と押入の中を見つめる。
部屋の中を見回した。
さっき子どもが絵を描いた画用紙だけが、ぽつんと部屋の中央に置かれている。
………………。
変わらず月の光は部屋の中に射し、微かな風でレースのカーテンが揺れている。
窓の外はベランダになっているようだ。
物干し竿がひとつ掛かっているのが見える。
辺りはしんと静まり返っていた。
他の部屋に誰かがいるのかもしれない。
決心すると、わたしはドアを開け部屋の外に出た。
暗く短い廊下。横にもう一つドアがある。
そこで立ち止まり中を窺う。何も音はしない。
ドアを開けてみた。
最初のコメントを投稿しよう!