見知らぬ家

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 テレビが置かれているサイドボードの上には、どこかの観光地のお土産なのか小さな置物と、フォトスタンドがひとつ置かれている。  フォトスタンドには、ふたりの若い男女と、真ん中にはにかんだような笑顔を見せる小さな女の子の写真。  若い男女は、小さな女の子の父親と母親のようだ。  もちろん、その男の人と女の人にも心当たりは全くない。  でも、写真に写る小さな女の子は、さっきまでいたマイという子だろう。  ちょっとしか子どもの顔を見ていないが、間違いない。  やっぱりこの家の子だった。  子どもがこの家の子だとしても、写真に写る両親はどこにいったのか。  あんな小さな子どもをひとりにして、家にいないなんて。  腑に落ちないことばかりだが、なぜか目が離せず、わたしはずっと写真を見つめ続けた。
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