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「樹~、残念だったな……って、ちょ……お前、ヒートかっ!」
「へ?」
双子の兄がリビングを覗き込み、驚いたように後退った。発情期? ああ、そういえばそろそろ予定日だ。
「うわっ、ヤバっ、三葉、そこ窓開けて! 四季! 樹を早く部屋に連れてけ! 母さん、クスリ~!!!」
双子の兄は二人ともアルファだ、四季兄だけはベータだから平気なのだろうが、オメガのヒート時のフェロモン発露は兄弟とはいえ上三人の兄にも影響が出る、気を付けていたつもりだったのに、まさかこんな時に……
身体が熱い、なんだかむやみに泣けてくる。
「ねぇ、試合は? 先輩どうなったの!?」
「試合なら負けたぞ」
三葉兄ちゃんにあっさり言われて血の気が引いた。
「……うそ」
「見てたんじゃなかったのか?」
見てたよ! 見てたけど途中で中継打ち切られちゃったんじゃんか! でも、なんで? 負けた? 先輩が? そんな、そんなの……
「うわぁぁぁぁぁん」
身体に力が入らない、熱は籠るし足元はふわふわしていてもう何がなんだか分からずに僕は泣き崩れた。
「わぁ、樹、泣くなぁ!」
「だって、先輩が負けちゃったぁぁ」
絶対優勝するって言ってたのに、優勝して僕を攫いにくると思ってたのに、それなのにこんなの酷い。そんなのないよっ!
もうどうしようもなく泣けて泣けて、そんな僕を四季兄は抱きかかえるようにして僕をベッドに放り込んだ。
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