写真の包丁

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「……包丁?」  一本の万能包丁だった。刃にはフラッシュを反射したらしい白い輝きがあった。フローリングの上に寝かせて取ったらしく、板模様が包丁の背後に見えていた。 「そうだな。多分ワザ物だぞこれは」  小山田はどこか楽しげだった。低能な悪戯、という程度にしか捉えていなかったのだろう。  だが、僕はその写真から何かどす黒い物を感じた。 「さっさと捨てた方が良いぞ」 「いや良いんだ。恨みの手紙を貰うなんてしょっちゅうだ。死ねとか、殺してやるとかな。いちいち気になんてしていられるものか。写真だけというのは珍しいけれど、これだってその中の一枚に過ぎないんだよ」  そう言って、小山田はゲラゲラ笑った。  付き合い切れないので、僕はさっさと部屋に戻った。  彼的武勇伝の続きを聞きたくないから、逃げたというのもある。
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