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その人の指が好きだった。 彼の指から与えられる快楽。 夜、友人がバイトしているバーで一人で飲んでいた時となりの席にいた彼から声をかけられた、それが出会い。 「櫻井聖夜といいます。ホストみたいな名前だけど本名だよ」 今どきのネオホストとは違い、一昔前のスーツを着たホストにしか見えないルックス。派手さはなく、落ち着いた雰囲気の大人の男だった。 「俺は志賀直也です。絶対親はねらってつけた名前だと思いますよ。ひどい両親です」 「歳はいくつ?」 「やっと二十歳になりました。友達が働いているここでお酒解禁にするって決めてたので来ました」 カウンターにいる友人がニヤニヤしている。とりあえず度数の低いカクテルから慣れていくことにした。 週末になるとここに来て櫻井さんと一緒に飲むことが多くなり、ある日悪ふざけでテキーラの飲み比べをする流れになった。 アルコール初心者なのに酔った勢いと相手が櫻井さんだということで気を許していたのかもしれない。 気がついた時、見知らぬ部屋のベットで全裸の二人が絡み合っていた。 「あ・・・」 櫻井さんの指は的確に俺の弱点を突いていく。声を押さえることが出来ない俺は女の人みたいな声で喘いで、体をよじり、もっと快楽を求めて指を求める。 「男に抱かれるのはイヤ?」 その言葉に何て答えたらよかったんだろう。 「・・・櫻井さんなら、いい」 アルコールで理性が飛んだ俺の体をどんどん開発していく。その指が後ろの穴に差し込まれた時、痛いはずのそこは気持ちよさに負けて吸い込むように指を飲み込む。そして男に抱かれる体に仕上がっていった。 それが彼の「仕事」だった。
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