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「二人とも酒は飲めるの?」 俺は「少しだけ」、一朗は「飲めます、安酒しか飲んだことありませんけど」と答える。 「じゃあ今度は僕がよく行くクラブに行こう。酒の名前と味を憶えておくのも仕事に役立つよ」 加賀谷は楽しそうに笑っているが、こちらからすると仕事での食事や酒なんて味もしない。ひとり部屋で飲むビールが一番おいしい。 でも仕事だから嬉しい顔をしなければいけない。 「楽しみです」 作り笑顔でそう言うしかない。指名されればそれだけ給料も跳ね上がるので機嫌を悪くされるのはまずい。 夜にセックスしているほうが気が楽だ。 「クラブですかあ。居酒屋しか行ったことないから緊張するー」 一朗も適当なおべっかを言っている。 金なら無限に持っているこいつは上客だ。 「・・・疲れたな」 「激しく同意です」 加賀谷から開放されて、文豪と野球選手が本音を吐露した。 「直也は綺麗な顔してるねえ・・・」 「一朗はかわいい顔してるねえ・・・」 「名前だけがねえ・・・」 ぐったりしながらタクシーを拾うために歩きだした。 「一朗は、その・・・。櫻井さんに教えてもらったの?」 「僕は元々そうなんだ。大学の学費のために趣味と実益で始めた。直也は?」 「俺は櫻井さんにだまし討ちにあった」 そうか、一朗は大学生なんだ。高校を出てぶらぶらしていた自分と違ってしっかりしてる。 「だからね・・・」 こちらを向いた一朗の顔が近づく。 そのまま俺の頬にふれるくらいのキスをした。 「直也のこと好きかも」 うっとりとした表情で俺をみつめる一朗が可愛かった。
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