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──それから、何年経ったのだろう。
私はスマートフォンを眺めながら、数年前のあの日々を思い出していた。
恋愛に縁がないと思っていたのに、好きな人が出来て、もう縁がないと思っていた幼馴染みに再会して。
今までで一番悩んで、泣いて、苦しんで、
世界には沢山の想いと、幸せと、色んな愛があると知った、かけがえのない思い出。
今でも思い出す度に胸が痛むことがあるけれど、あの毎日と、大切な幼馴染みであるアオのお陰で、現在という日々がある。
そのアオに沢山の想いを伝えたいのに、私はそれを叶えられずにいる。
大好きな人と、両想いになったあの日。
アオに、色々伝えたくて、ショッピングモールの中に戻って二人がかりで探したけれど、何処を探してもアオの姿はなくて。
電話やメールをしたり、二人が再会したメッセージアプリで声をかけたりしたけれど、何の音沙汰もなかった。
アオが働いていた花屋「ことのは」にも行ってみたけれど、強面の人──店長さんだったらしい──に「新谷は数日前に辞めたよ」と言われてしまった。
「……新谷は、もう秋花の前に現れる気がないのかも知れない」
そこで私は、アオがあの日、どういう想いでショッピングモールに連れ出したのか、初めて知った。
「行ってらっしゃいって……言ったじゃん……っ」
──秋花はきっと、大丈夫だから。
そう、背中を押してくれたアオは、あの日以来、一度も私の前に姿を現さなかった。
そして、あれから数年が経った今も。
『お掛けになった電話番号は、現在、使われておりません』
「……馬鹿アオ……っ」
ありがとうって伝えたかった。
ごめんねって謝りたかった。
好きになってくれてありがとうって言いたかった。
それに──……。
ドアがコンコンとノックされる音がして、私は「はい」と声をあげた。
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