情事

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

情事

昨夜の彼は激しかった。寝起きの高橋南は思う。最近は中々会う機会がなかった。それが少なからず影響しているだろう。私も激しく求めたから。不倫である。彼には妻子がいて、高橋南にはいない。何となくだった。切っ掛けは突然。「落ちましたよ。」カバンに着けていたアクセサリー、不細工なネコだ。それを拾って、優しく微笑むその姿に、高橋南の心はときめく。「あ、あの、時間ありますか!」咄嗟に出た台詞。お礼がしたいと喫茶店に誘い、意気投合。体を求め会うのに、さほど時間はかからなかった。多いときは週3回。後に彼には妻子がいると知るが、どうでも良かった。たまたま知っただけで、彼が言ったわけではない。歳は父親ほど離れていようか。好きならばそれでいいと高橋南は思う。今、彼は隣にいない。まだ帰っていないはず。トイレかな?早くあの胸へ頬擦りしたい!布団の中で我ながら少し恥ずかしい気になった。しかし遅いな・・もう30分は経過している。ベットの下には脱ぎ捨てた彼のスーツがある。仕事帰りに行きなり現れたから。 一月は会えなかったろう。連絡はあったが、会えない不安が余計な想像を生む。不倫関係になり、はや2年。飽きられたのかな・・それを払拭するように現れた彼。高橋南はベットから出ようとして、シーツに手を着くと、何か小さな固いものに触れた。それに目をやると、それは、ダンゴムシ。小さい頃、公園でよく見た虫。何故ここに?それはベットの上で、本能のまま動いている。あり得ない。何処から入ってきたのか。ここは3階だし、ベランダに観葉植物もない。何かに混入して?憶測は色々できるが、とにかく今は彼!高橋南は、ダンゴムシをティッシュペーパーでくるみ、ゴミ箱へ捨てると、トイレの方へ向かった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!