オフ タイム オフ

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オフ タイム オフ

「はぁー」  機内カタログをめくるエイジの横で、ドッジは何度目かもわからないため息をついた。 「なんだよ、まだ根に持ってんのか」  エイジは顔も上げず、水着美女に彩られたツアーカタログに目を落としている。 「良いものだと思ったんだがなあ」 「かっぱらったものに期待してどうすんだよ」  狭い座席で、伸びをするエイジ。前から歩いてきたCAにエイジは馴れ馴れしく笑いかけるが、彼女は仕事用の笑顔を見せて通り過ぎる。 「値打ちものだと思ったのに」 「いつまでも同じこと言ってんなよ。どこにでもあるレプリカ、三千ルーブル、そう言われたんだろ」  モスクワの古美術商の店から出てきたときのドッジのひどい顔を思い出し、くくっとエイジは小さく笑う。 「ま、とにかく仕事は終わったんだ。休暇だ、休暇。おい、タヒチとモルディブ、どっちがいい?」  エイジは待ちきれないというニヤけ顔で、カタログをドッジに投げてよこす。 「休暇はいいが──」  ドッジはため息まじりにカタログを片付ける。 「報告書を仕上げてからだぞ。お前いつも──」 「もう、書き終わってる」 「あ、いつの間に?」 「お前こそ、さっさと書けよな。俺は早く解放されたいんだ」  エイジはニヤリと笑うと、アイマスクを付けて眠りを決めこんだ。ドッジは今度は声に出さないため息をつき、機内の狭いシートで報告書を書きはじめる。二人を乗せた機はSFO(サンフランシスコ国際空港)へ時間通りに到着し、二人はそこからAMIA本部へ直行して報告書を提出すると、口頭での報告もそこそこにSFOへ戻り、十二時間後にはタヒチのリゾートホテルにチェックインしていた。
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