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だけど確実に捉えた。響が使える魔術の中でも最高威力を誇る一撃がジャストミートしたんだ、いくら夜道でも無事では済まないはず。
これで倒せたとは思っていない。でもダメージは与えられた。ここから畳み掛けることが出来れば勝機はあ───ズドンッッ!!!
「…………」
「危なかった。間に合ってなかったら負けてたな」
結界を貫いて真上から落ちてきた夜道が砂煙の中で言う。
ゾッ…、と響の背筋が震えた。
声からも、気配からも先ほどまでの夜道とは違う圧倒的な威圧感が迸っていたからだ。
「お前はもう半端な覚悟じゃ相手に出来ないレベルにまで到達してる。俺も奥の手を使わなきゃ今のは耐えられなかった」
煙りから出てきた夜道は響が知る鈴重夜道では無かった。
赤褐色の肌、額からは二本の角を生やし充血とは違う鮮やかな赤い目をしたその姿こそ、悪魔になった夜道の本当の姿。
「…………………」
響は震えながらも構えた。歯はカチカチと鳴り、目にはうっすらとだか涙が浮かんでいた。
怖いからじゃない。
悔しいからだ。
全力さえも通用しない遥か遠くに行ってしまった夜道には、どう足掻いても追い付けないとわかってしまった悔しさのせいで涙が出てしまったんだ。
……それでも諦めたくないから、響は拳を握っているのだろう。
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