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「───ありがとな」
囁きを聞いて、でも理解出来る余裕は無くて。
そして。
高鳴響の体が、【技術革命】を施した魔術を解除して脱力した。
響の腹に押し当てられた夜道の左拳が決着を告げた。
夜道の腕にもたれかかるように気を失った響をそのまま片腕で受け止め、夜道は細めた目を向ける。
自分の胸元。
気を失ってなお服を掴んで離さない響の左手。
「………本当に、強くなったな高鳴」
「でも」、と一拍空けて、夜道は涙を流す少女を見下ろしながら、
「この勝負、俺の勝ちだ。お前との真剣勝負なんてもう二度ごめんだよ」
一月一日、元旦のとある工事現場。
『死者を惑わす愚弄者(ネクロマンサー)』と『魔を統べる謀反者(サモンマスター)』。二人の魔術師による決闘は人知れず起きて、決着した。
二人の魔術師は……いや、二人の男と女はこの日、この時をもってこれからの人生が劇的に変えることになった。
それがいい方向か悪い方向かは、当人たち次第である───。
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