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夜道は胸ポケットから何かを取り出して響の顔に投げつけた。額にぶつかって下に落ちたそれは、包装された小さな箱だった。
「全部台無しだチクショウ!俺の一世一代の覚悟も先手で潰されちまったしな!ちゃんとした機会に渡したかったんだよ俺は!だからお前が勝負なんて言い出した時に次の機会にって言ったんだよわかるか!?」
やけくそ気味に叫ぶ夜道など気にもしないまま響は箱を拾い上げ、包みを剥がして箱の中身を見る。
曇り空なのに美しく光るそれは、銀色の指輪だ。
「よ、夜道、これっ…!」
「ハ~~~~ッ、ムードもクソも無いな………な、なんつーの?その……予約……っていうか、そんな感じのだよそれは…」
ふと前方から接近してくる気配を感じて前を向くと、響が両手をめいっぱい広げて夜道に飛んできていた。目には涙、でも表情は明るい笑みでいっぱいにしたまま。
「───あぶねっ!」
「ぶげぅッ!?」
咄嗟に屈んでかわした夜道の頭上を通過し、夜道の後ろにあったコンクリートの柱に顔から突っ込んだ響は痛々しい音とブサイクな声をあげた。
「うごぶふふふふふふふふっ…!!」
「えっ…何?痛がってんのか笑ってんのかわからねえんだが。怖っ」
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