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唇が離れてようやくまともに呼吸が出来るようになった夜道は白目を剥きながらも懸命に酸素を取り込む。対する響は満面の笑みで夜道に抱き付いていた。
「離さないぞっ、絶対離してやるもんか!」
「……わ、わかった…どこにも行かないから、ちょっと離れてくれ…」
「ヤだねっ!ン~~~!」
「んんんんんんんんッッ!!!??」
またキスされてしまい夜道の頭の中で混乱の渦が脳を大回転させる。夜道のキャパを遥かに越えてしまい処理しきれず力ずくで響から離れて地面を転がった。
「あっ!離れるな夜道!」
「待て待て頼むマジで待てェ!!」
完全に劣勢。最早今の夜道に勝ち目は無くただただ響から情けなく逃げることしか出来なかった。
夜道にしてはクールには決まらなかった。だけどそれは相手が高鳴響だからこそでもあった。
悪魔と戦うことを生き甲斐にし、父への憎しみや妹への償いを背負って血にまみれて来た少年を受け入れ、救い上げるのはそんな世界とは無縁の少女。
響だから夜道は選択出来た。
夜道だから響は想いを寄せた。
お互いがお互いを引き寄せたのは偶然の出会い。駆け付けたのは夜道で、助けられたのは響だったから、様々な困難を乗り越えて、こんな形で結ばれた。
「新年一日目だしお祝いしようっ!あたしの家で熱~く言葉でも体でも語り合おうぜダーリン!」
「ざっけんな!俺はそんな爛れた関係ごめんだぜ!」
悪魔だろうと人間だろうと関係無い。
きっと二人ならば、魔術師が日常的にいるこれからの世界を生きていけるだろう。どんな困難があろうと、本当に守るべき大切な存在になった響が側にいるなら突破していけるだろう。
これから先も鈴重夜道は戦い続ける。
けれどきっと心配はいらない。
何故なら彼は───欠陥ありきで最強だから。
─ 完 ─
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