Story-1 遠くない決戦へ向けて

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[理の探究団]。数人の魔術師で構成された魔術結社だ。彼らの目的はこの世界を魔術師が崇められる世界に変え、そこで神として崇拝されることらしい。 子供の頃に見ていたいくつかのテレビアニメの中で、悪者たちは決まって世界征服を目的としていた。いまいちよくわからない、世界を征服するということは世界を自分の物にするということなんだろうが、子供だった自分は漠然と捉えてそれがどういう物なのかを理解出来ていなかった。 『世界をいいようにしようとする悪者』、そんなくらいにしか思えなかった。そして悪者たちは主人公たちに倒されて野望は潰えて世界は平和になる。幼稚な筋書き。実にシンプル。 ―――もしそれが現実に起きたら?そんなことを考える子供はいない。きっと大人だっていないだろう。響だって考えたこともなかった。 だけど、だ。 今、そんな幼稚でシンプルな筋書きが起きようとしている。響はそれを知っている。 だから恋しく感じてしまうのだ。今まで自分がいた場所がすごく遠くて、簡単には取り戻せないことを。 「あ~……ヤバい、鬱になりそうだ…」 一人言を吐く。考えれば考えるほどにどんどん思考が黒ずみ歪む。 「お前が深く考えることじゃねえよ高鳴」 目を向けた先に立つのは赤みがかった茶髪の少年。響と同じ学校に通う生徒―――魔術師『過ち砕く断罪の聖者(ペナルティーブレイカー)』の奥野 陽京(おくのひきょう)だ。
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