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「学校サボってこんなところで何を考え込んでんだ?お前だけの問題じゃないんだ、考えすぎると身が持たないぞ?」
「……奥野はさ」
「ん?」
「ずっと魔術師として生きてきたんだよな、平穏な日常が恋しくなったりしたことあるか?」
「ないな」
はっきりきっぱり陽京は返す。
「俺は小さい頃から魔術協会に関わってたからな、むしろあっちの方が俺にとっての日常だった。お前は魔術に関わらずにずっと生きてきたからそう感じてるんだろうけど、残念ながら生きていた環境が違うから共感は出来ねえ」
「そっか…」
「けど、平穏な日常にしたいって気持ちは同じだよ。協会にいたら毎日のようにどこかで魔術師が問題を起こしてその尻拭いをしてる日々は正直うんざりだった。だけど思うんだ、何も起きない日常なんてないんじゃないかって」
「………」
「だからこそ人間ってのは前に進もうと思える生き物なんじゃねえか?魔術師だって人間だ、そういう困難があるから強くなって進める。何も起きない日常なんてつまんねえしな」
「……じゃあ、今回の件も仕方ないことなのか?」
「起きるべくして起きたことなら仕方ないだろ、人生をコントロールするなんて人間には出来ないことだ。やらなきゃいけないんならやるしかない、夜道の死を乗り越えて、探究団の連中をどうにかしなきゃ前には進めない、前なんてないんだから」
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