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幼少期からずっと戦いの中にいた陽京だからこその考えだろう。言葉だけなら響にも理解出来るが、胸にある覚悟は全く違う。
陽京は前を見ている。響は後ろを見ている。たったそれだけの違いが決定的な差となる。
「……なんか真面目な話しちまったな。俺のキャラじゃないんだ、本来は夜道が言うようなことだなこれ」
「奥野は……夜道が死んでどう思ったんだ?」
無表情になった陽京。しかしその目にある光の変化には響でも気づけた。
「もうどうにもならねえよ。夜道は戻ってこない、だから俺はもう夜道を振り返らない」
「………」
「探究団を潰す。そんでカイスレックだけは必ず殺す。夜道を振り返るのはその後でいい」
淡々とした口調。起伏が薄く感情が乗っていない言葉に響は背筋が冷たくなった。
平気なわけがなかった。陽京にとっては夜道との付き合いは響以上に長く、監視という役目はあれど親しくしてきた仲だ。そんな夜道が死んだとなればどう思うのかなんて聞かなくてもわかることだった。
「夜道の墓はまだ作ってない。それは全部終わってからでいい、今やるべきことはカイスレックを殺して探究団を壊滅させることだけだ。あと半月、それまでに準備を済ませなきゃいけない。お前もそうだろ?」
「……ああ、そうだな」
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