第二百七回:死者の奢り 大江健三郎作

1/1
前へ
/195ページ
次へ

第二百七回:死者の奢り 大江健三郎作

「いやぁ〜、俺昨日超ラッキーなこと起こってさ」 「なに?そのラッキーなことって」 「水上先生いるじゃん。あの人にフレンチレストラン連れてって貰ってさ、全部俺の奢りだって全部奢ってもらったんだよね。もう食いまくりの飲みまくりでさぁ。でも水上先生にお礼言うの忘れてさぁ、あの人の今度の講義っていつだっけ?その時にお礼しようと思うんだけど」  友人は相手の話を聞いて青ざめた。友人は長い間言うべきか言うまいか迷っていたが、やはり言わねばと決意して言った。 「あの、水上先生、去年死んでるよ」
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加