真心

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沖田はゆっくり瞬きをした。 今目の前で苦しむ彼女は。 沖田のことも、沖田の大切な人達のことも、まるで自分のことのように苦しむ彼女は。 淡々として冷たいように見えて、本当はとても優しい子だ。 自分を何度も助け、傍にいてくれた、大切な子だ。 とても短い間だったけど、沖田はよく分かっていた。 「ありがとう」 沖田は心の底から笑った。 力の入らない腕を懸命に伸ばして、女の子の頬に手を当てた。 柔らかく、もちもちとしていて、冷んやりしていた。 「ごめんな」 「何がっ……!」 怒気のこもった女の子の声も、ふふ、と笑い飛ばす。 「急に血を吐いてびっくりしただろ」 怖がると思って隠していたのだ。 女の子はぎくっとして、体を強張らせた。 やがて観念して目を閉じる。 「総司さんは本当に人のことばかりだ」 落ちていきそうになった沖田の手を、女の子は両手で包み込んで支えた。 「この前の毛虫騒動の時、不意に袖を見ちまってね」 知っていたよ、と。 そうか。 沖田は頭の中がすっきりと晴れ渡っていくのを感じた。 だからこの子はあんなに泣いていたのだ。 「血が怖かったかい?」 揶揄うように聞きながら、沖田は期待していた。 自惚れていいのだろうか。 自分との別れを惜しんで泣いてくれていたのだと。 「違うに決まってるだろ!」 馬鹿、と女の子は苛立ちを顕にして吐き捨てた。
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