葉も散りゆきて

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橙色の空が頭上で広がっていた。 乾いた秋風に揺れる、ススキの群れ。 その向こうでは大昔からずっとそうであったように、大きな川がゆっくりと流れていた。 遠くに見える山へと、燃え盛る太陽が消えていく。 前を歩く友達の影が一層濃く長くなった。 「じゃあな、篠」 「また明日なー」 途中で違う道へと帰っていく友達に手を振ってまた歩き出す。 1人になると余計に思い出される。 所属している野球部の監督に言われた、あの言葉。 笑う仲間達の何処か余所余所しい態度。 親の期待と不安。 新聞や週刊誌に載っていた記事のこと。 いくらプロ注目の右腕だの、超高校級のピッチャーだのと言われていても、俺はただの高校生で。 本当はとても不安で寂しくて苦しかった。 立ち止まり、振り返る。 すぐそこまで宵闇が迫って来ていた。街頭の無機質な白い灯の下には灰色の道路がずっと続いている。誰もいない。 もう2度と誰にも出会えないような、1人ぼっちになってしまったような、そんな気がした。 ざらざらと風が吹いた。 目を細めつつ前へ向き直ると、道の端に女の子が座っていた。 短く切り揃えられた黒い髪が風で揺れている。 夕暮れの中でもはっきりと分かるほど色が白い。 遠い目で川の方を見ていた彼女がふいにこちらを見た。 思わずハッとするほど綺麗な、漆黒の瞳だった。 綺麗な、瞳? 次の瞬間、頭の奥から何かが湧き起こってきた。 何かとても……。 とても大切なことを思い出しそうな……。 しかしそれは一瞬のことで、後には痺れる程の懐かしさだけが残っていた。 こてん、と不思議そうに女の子は首を傾げた。 何処かで猫の鳴き声がした。
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