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「あー…俺ちょーっと腹痛いんで帰りまーす。あ、でも翔はちょっとついて来い。話がある」
流石にこれ以上このカオスな一角に留まっていたら腹じゃなくて胃が痛くなる。
凪と一緒に騒いでいたはずが、どこか落ち着きがない翔をちょいちょいと手招きしながら呼ぶと、すぐに小走りで側まで近づいてくる。
それだけで周りはキャーキャー騒ぐが俺からしたら犬にしか見えない。
さながら今日のわんこ……。
「「えー?お前らどっか行くの?」」
「先輩達もう行っちゃうんスか?!」
「あー、ゲリラ豪雨並に酷い腹痛でさ…またな」
そんな酷い腹痛なんスか!? と叫びながら席を立ち、追いかけてこようとする柴田より先に翔の腕を掴んで食堂の外へと駆けた。
腹痛設定は即ないないになった。
人気の少ない渡り廊下の階段まで走ったとこで、ようやく俺は足を止めた。
「よし…。んで、翔はなんでいきなりこの学園に来たんだ? この任務は俺だけのはずだろ」
「んあー……っと、その任務に不可解な点があるとかで綾人くんが心配だから俺も行けって言われたんだ」
ちなみに急じゃないからね? 綾人くんが転校していった日ちゃんと言おうとしたから、と睨みつけてくる翔に言葉が詰まった。
「ごめんって…」
苦笑しながら翔に謝り、不可解な点がどこかにあっただろうかと思考を巡らせる。
ここでの生活は生徒が濃ゆすぎる事以外は特に何も無かったはず…。
「…綾人くん」
「っ、なんだよ?」
考え込んでいると、突然翔が情けない声を発しながらもたれ掛かるように抱きついてきた。
「ァー、久々の綾人くんだぁ…」
「……え、もしかして寂しかったのか?」
吐息が首筋に当たり、くすぐったくって少しだけ身を捩るが、逃がさないとばかりに抱きしめる力を強められる。
腹が圧迫されてぐぇ、なんて蛙が引かれた時のうな声が零れた。
「当たり前でしょ。確かに総受け展開期待してたけどさぁ? …ごめんね。もうちょい早く来てればこんな傷なんか付けられなかったのに」
涙ぐんでる声のまま手首を優しくなぞられる。
こんな落ち込んでる翔は久々すぎる事で返す言葉が見つからず、とりあえず翔の髪をわしゃわしゃと乱しといた。
するともう一度深く抱きしめられると同時に、ほんの少しだけ肩が濡れたような気がした。
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