友達

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しばらくすると満足したのか、翔はやっと顔を上げた。 いつもは萌えやら何やらを語っている瞳は少しだけ潤んでおり、目元も少し赤くなっていたが、その表情は何とも満足そうな顔だった。 「充電完了した。ありがと! そういや余談なんだけど、遥太(ようた)が兄ちゃんが電話出ないんだけどどうしよって凄い慌ててたからさ、後で電話してやってね?」 「……ごめん無理。携帯壊した」 「はえ?!」 「夜中テンションでつい…えへっ」 左手をぐーにした手の甲を頭にこつんとぶつけるながら伝えると、翔は頭を抱えて唸り始めた。 「可愛いけど! 可愛いけど、それはダメだよぉぉぉ!!」 「まぁけどさ、遥太なら平気だろ」 「……遥太がヤンデレ化しても俺は止めな「公衆電話ってどこかにあるっけ?」…仕方ないから後で俺の電話かしてあげる」 「さんきゅ。じゃ、そろそろ戻るか」 「だね…って、やべ! 食堂にカメラ忘れたからちょっと取ってくる!」 ふと思う。 もしかして翔は凪と前世の双子とかなんとか何じゃないのだろうか。 だって気づいたらカメラ持ってるし聞いたことの無い…多分なにかの用語使って会話してるし。 「…ん? あれって」 ふと、裏庭の木陰のふもとに見覚えのある赤い髪がチラリと少しだけチラリズムしていた。 「お、やっぱり」 木陰で眠っていたのは朔だった。 しかも意外と可愛い寝顔。 木陰の木漏れ日に照らされているその顔は、常に何かに警戒するように眉間に小さく寄っているその皺が今はなく穏やかなものだった。 その表情が何ともまぁ物珍しくて、もうちょい近くで見ようとした瞬間。 腕を取られ、後ろから抱き込まれた。 「おわ、あったけー…じゃなくて。おい、朔起きろ!」 「…ん……」 「朔、ちょっと腕離してくん…いっ!!」 寝ぼけているのか、不機嫌そうに少しだけ唸るとフードが落ち晒していた首元に噛み付いてきた。 普通に結構痛てぇ、もしや本当に狼だったり……。 「う、ひっ…」 実は狼説を唱えていると、今度は位置的に動脈辺りを甘噛みをしてきた。 …もしかしてこのままほっといたら俺、マジで食われる? 数分後には首元が血まみれ姿になっているのを想像し、サッと全身の血の気が引いていく。 「朔! ちょ、起き…いっつ! 起きろって!」 叫んでいる途中にもまた噛み付かれたが、このままじゃ食われる恐怖心のままに朔の腕をバシバシとかなり強めに叩いた。 「う……あ?」 「朔!! やっと起きたか…」 半泣きになっていると耳元で困惑しているような声が聞こえ、一気に絶望の底から救われる。 良かった、マジで食われるかと思った…。 「…香坂……?」 「はよ。そろそろ離してくんね?」 名前を呼ばれた事により、首だけ後ろに向かせると初めて会った時と同じ様なぽかん顔の朔が目に映った。
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