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「どーした?」
「…ごめん」
髪についた草を軽く払いながら起き上がり、朔と向き合うようにあぐらをかいて座る。
すると朔も上半身を起こしながら話しかけてきた。
「なんで香坂がここに居んだ?」
「食堂の入口付近から朔の赤い髪が見えてさ! …あとさ、勘違いだったらごめんなんだけど、もしかして俺の事避けてたりする?」
前々からどこか心の隅で思っていた事を言葉にすると朔の動きが一瞬止まり、視線が右往左往した。ビンゴか。
「そんなこと…」
「ある。だって朔に案内してもらったあの日から喋ったの今日が初めてだろ?」
やっぱ当たりだったか…と少しだけムムッとしていると、右往左往していた茶目とやっと目が合う。
「……だっ、て…俺と香坂はただのクラスメイトだろ…」
そんなことを言い放つ朔に今度は俺が驚く番だった。
何故って俺はもう朔のことを友達だと思っていたからだ。
え、もしかして勘違い? なんか恥ずいし悲しいんだけども。
湧き上がってくる感情は、怒り等ではなく困惑と羞恥。
「友達じゃねーの? まさか俺だけだった?
友達だって思ってたの」
「は? …友達だと思ってくれてたのか?」
「俺はそう思ってたけど…朔は違ったのか?」
「俺は…」
「……あー、無理に答えなくて大丈夫。なんかごめんな? 朔が嫌ならもう」
歯切れ悪く、口ごもる朔に少し傷ついてしまった。俺から訊いたのにな。
「嫌じゃねぇけど、俺と一緒に居たら不幸になるし…傷つけることになる」
やっと話した朔の表情はどこか苦しそうだったが、オレはその言葉に少しほっとした。
「嫌じゃないなら良かった。あと不幸かどうかは朔じゃなくて俺が決めることだから。
つーことで、友達になろーぜ」
友達同士で故意じゃなくて傷付け合うことなんて普通だしな。と付け足しながら多少強引なりとも笑いながら手を差し出した。
「…いいのか?」
「それ俺のセリフな。だって俺が朔と友達になりたいんだから」
言ってて少し照れくさくなって、手を差し出してる反対側の手で頬をぽりぽりと掻くと朔は戸惑いながらも手を重ねてきた。
「これで正真正銘の友達だな。改めてよろしく朔!」
「…ありがとうな」
朔はそう優しげな笑顔を浮かべて俺の手をそっと握り返してきた。ちょっとときめいちゃったじゃねーか。
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