身勝手な親愛なるクソ親父

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扉上に取り付けられているプレートには風紀室の文字。 ついこの間見たものと全く同じ扉に安堵し、後ろを振り返り軽く頭を下げた。 「助かった…隊長さん達、ありがとうございま」 ちゅっ。 礼を言い頭を上げようとした所を掴まれたと思ったら、次に感じた両頬に柔らかい感触。 「ふ、ふん! お、おおお礼はこれでいいよ!! …ほら澪、行くよ!」 「ほっぺ柔らかかった…またね」 「ん?」 近く理解が出来なくぼーっと小走りで去っていく二人の後ろ姿を眺める。 謎の既視感はチワワとダックスフンド。 とりあえず頬の感触は気にはせずに、目の前にある風紀委員室の扉を軽く二、三回ノックすると、ドタドタと足音が聞こえた後に勢いよく開いた。 「はいッス! あ、不審者…じゃなかった綾人先輩じゃないッスか! どうしたんスか?」 「あー真壁いる? ブレザー返したいんだけど」 「真壁先輩は風紀の見回りで居ないッスよー! なんか用事でもあったんスか?」 「いや…じゃあこれ渡しといてくんね?」 「分かりました!」 「あんがと、じゃあな」 「うッス! また!」 白い紙袋を柴田に渡し終わり、パタンと扉が閉まるが、暫くその場に立ち止まる。 …すげー柴犬だった……やっぱ犬系って全員可愛い。 数分経ち夢見心地からやっと意識を戻し、慌てて部屋に戻ろうと踵を返した。 返した、はずだった。 「…え」 歩こうとしても動けないことに気づき視線を下に向けると、生白い手が俺の足首を掴んでいるではないか。 「あ……あ、あああ悪霊退散んんんん!!!」 つい半泣きで足にまとわりついていた男の頭に踵落としを食らわせた。…あれ? 触れられる? 「ごふっ…!!」 「あ」 男はそのまま俺の足首から手を離し、バタンキューと死ん…顔面から廊下に突っ伏してしまった。 やべぇ…成り行きで殺っちまった……。 「これ触れられるし人間…だよな? あのー大丈夫すか?」 返事がない。ただの屍のようだ。 「もしかしてマジで死んだ?」 「ぐっ…この美しい僕が、死ぬはず…ないだろ」 「ギャァッ!!! …い、生きてた…」 どうやら左目に眼帯を付けている男は子鹿のようにぷるぷると震えながら起き上がった。 よく見て見ると脳天にコブが出来ていてmmだけ申し訳なくなる。 「えっと、踵落としちゃってごめんな」 「ふっ…こんな美しい僕に踵落としとはいい度胸だ! 制裁してや(ぐううう」 高らかに笑いながら男が俺を指差した瞬間、この場に相応しくない音が前方の_男の腹から聞こえた。 「ふはっ、腹減ってんのか?」 「う、うう、うううるさいっ!!」 「そうだ。もうすぐ昼時だしさ、踵落とししたお詫びを兼ねて俺ん所で飯食うか?」
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