身勝手な親愛なるクソ親父

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「お、美味しい! …はっ! 別に美味しくないぞ! この僕にこんな庶民の飯を「はいはい」むぐっ……もぐもぐ」 「ハァハァ…綾人がまたフラグを!! しかもあーんを!!」 今どんな状況かと言うと。 嫌がる男を宥めながら部屋に連れ帰り、ダークマターしか作れない俺が唯一作れる料理…チャーハンを作って男の目の前に用意した。 だが男は腹を鳴かしてる癖して全く食べなかったので、仕方なく俺があーんして食べさせている。 まぁ文句を言いながらも、俺が食べさせようとするとすぐに口を開いて大人しくもぐもぐと食べているので、美味しいのだと思っておく。 そんで背後から連射する音は無視。 「ま、まぁ? 悪くはなかった」 全て食べ終わる頃には、腹がいっぱいになったからかほんの少しだけ素直な性格になっていた。 「なら良かった。で、お前なんであんな所で倒れてたんだ?」 「……た」 「は?」 「だから! 貴様を盾にして隠れてたんだ!」 「…やっぱ俺が踵落とししたせいで頭おかしくなったか?」 「そんな哀れんだ目で僕を見るか! …追われてたんだから仕方ないだろ」 「追われてた?」 「僕はこの学園とライバル校の季野湖(きのこ)学園の生徒だ。だからか知らないが、この学園の女みたいな奴らに追いかけ回されてたんだ!!! ……〜〜ッ…」 男は苛立ったように立ち上がり、テーブルを両手で勢いよく叩いた。 その所為で声にならない痛みの叫びを上げながら悶えていた。 つか季野湖学園ってなんだソレ。名前おかしすぎだろ。 その学園の理事長はきのこが好きなのか? 「まぁまぁ落ち着けって。…そーいや自己紹介してなかったな。俺は香坂 綾人、お前は?」 「僕は如月(きさらぎ) (かなで)だ」 如月はまだ手が痛いのか両手をパタパタとさせながらドヤ顔で名前を名乗った。 …が、その手のパタパタのせいでドヤ顔が全く決まってない。 「つか何でこの学園に来たんだよ。見学?」 「そんなものスパイをしに来たに決まっているだろう! …ぁ」 ぁ、と口を両手で押え、顔面蒼白にしながら視線を右往左往し始める如月に漸く気付いた。 コイツはただの馬鹿正直だって事に。 「あははっ馬鹿正直過ぎだろ!」 「う、うるさい…この事は誰にも言うなよ!」 「忘れてっかもだけど一応俺の同室者ずっとそこで写真撮ってんぞ?」 いつの間に移動したのか。 今度は奏の後ろで鼻息を荒くしカメラで俺達を撮ってる凪をすっと指差す。
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