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「ちゃんと誠心誠意込めて言えくださいッ…!!」
「カンペあります?」
「今すぐ鼻にワサビぶち込みますよ」
テメーは俺をキレさせた。
という幻聴が聞こえてくる並にクッソド低い声に思わず背筋がピンと伸びた。
「やだな冗談すよ」
ヘラヘラ笑えば、再度訪れる無言の間。
はは…………無理だ。
流石のシリアスキラーこと俺も居た堪たまエっアッ待って待って。なんか懐からワサビ取り出し始めて……あれ、やっぱ見間違…───からしだ、あれからし!
ア゛ッ待って、アッ、お客様ーーー!! お待ちくださいお客様〜〜〜!! からしは鼻にぶち込むもんじゃありません!! お止まりくだ、ガチでやめてくれ!!
ぶちゅッ。
俺は泣いた。
スマイル動物面達に囲まれながら俺はマスクの中にからしを入れられた。地獄絵図。
普通にツーンとしてガチ泣きすれば熊谷が声を上げた。
「こ、この子ちょっと頭弱そうだし…せ、制裁はし、しなくていいんじゃないかな? 頭弱そうだしさ…」
「…僕もそう思ってた。かなりオツム弱そう……」
これは………庇われてんのかな。
でもからしをマスクにぶち込まれるっていう制裁はもうされ「同感です。仕方ないですね、邪魔なのでサッサと野に放ちましょう」…。
「エッッッ??!れ?れ?!!?」
「エれれ煩いですよ」
「いや、そんなんでいいんすかッ!? 俺がバカだから!? 俺がバカだから制裁してくれないんすか!?」
ガタガタと椅子を揺らしながら声を大にすると、じり、とうーちゃんが後ずさった。
「まさか君、そういう趣味が?」
「すんません間違えました」
「何をどう間違えたらそうなんの…」
「ちょっとダチョウ並の脳フル回転させるんで…よし、なんで制裁やめるんすか?」
「キモッ」
「辛辣な言葉だけどもんないのヤメテヨ…ハートブレイクしそうだから…」
「い、いつから恋してたの?」
「それはもう一目惚れで」
「キモッ」
そして再び訪れる静寂。
俺の心ハートブレイク。今なら大ヒット間違い無しのエモソング作れそう。
「ウウウウウ」
「バイブ音の真似してんの…?」
「泣き声です」
「急に素にならないでよ……」
「うす」
リクエスト通りにもう一度涙すれば、ゆるゆる紐はいつの間にか犬井に解かれていた。
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