被験体28番

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 そして、目当ての扉を開け放つ。  中には初老の研究者と、同僚である女研究者が居た。  思い詰めた表情をしている。  オレはモニターを眺める。  モニターでは被験体28番が、また一人、誰かを殺した所だった。  所員達は、名札に生体反応を示すプレートをつけていて、誰がどこに居るかモニターに緑の点で示している。  点はおよそ50ぐらいしかない。  半数以上はヤツに殺られたらしい。 「状況は?」  オレは息を整えながら言う。 「最悪だわ。今所内全ての防火扉を閉めているけど、ヤツのスピードは止まらないわ」 「まだ中に残っているやつは、どうするんだ?」  女は肩を竦めただけで、何も言わなかった。 「あそこまで圧倒的な力を持っているとは計算外だった。ヤツめ、実験の時に手を抜いていたな」  初老の男が言う。 「応援は?」 「今警備が行っている。射殺もやむなしと伝えているわ」 「オレが見た限りでは、拳銃ぐらいじゃ当たっていないのと同じだぞ」  体感では、ヤツを止めるには戦車ぐらい必要だろう。  大袈裟ではなく、そう感じた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加