日常的超常現象

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日常的超常現象

 それから、輝夜は家の戸締りを徹底するように心掛けた。  就寝時に窓を開け放さない(今までやっていたと知ったら、両親や絵梨に叱られそうだ……)、玄関と裏口の鍵のチェック、その他の窓も必要時以外は鍵をかけるなど気を付けて生活した。  が、不思議な現象は一向におさまらない。  相変わらず帰宅するときれいに真っすぐ揃えられたスリッパが出迎えてくれるし(輝夜は斜めに揃えるくせがある)、朝起きたら電気ケトルの湯は沸いているし、例えば朝ごはんはおかゆにしよう、と考えている日でも、自動でトーストが焼きあがっていたりする。それをそのまま放置すると、いつのまにかマーガリンまで塗られている始末だ。 『ゼッタイおかしい! 事故物件? ちょっとなにがあったか調べてみる』  と、絵梨からメッセージが来ていたが、特に害があるわけではなし……と、輝夜はあまり気にしていなかった。  しかし、妹や夕菜にまで「出るんじゃない?」と言われては多少の居心地の悪さを感じる。そういえばときどき、パタパタパタ……と、自分以外のスリッパの音が聞こえたりする。インターネットで調べてみると、このような音をラップ音というそうだ。  そんなある日の夜。  輝夜がベッドに腰かけてネイルケアをしていると、ギシシ……と天井が軋ん(きし)だ。  びくっと肩を震わせた輝夜だが、自分を落ち着かせるために深呼吸をする。 (大丈夫よ、軋みくらい、どこの家にだってあるわ。まして、古い家なんだし)  そう思い作業を再開したのだが、軋む音は断続的に聞こえてくる。  背筋を、ぞくぞくと寒いものがかけあがった。 (誰か……何か……いる?)  まさかとは思いつつ、輝夜は部屋を出て、廊下の電気をつけた。  じっと耳を澄ませてみたが、特に何の音も聞こえなかった。  その日は気を取り直して眠ることにしたのだが、輝夜が眠ったあと、天井からはやはりギシギシとなにかが動くような音が響いているのであった……。
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