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和美は試着室の近くの服を吟味する風に近づいて堪能させてもらう。女物しか置いてない店内に男は一人もいないが大胆だ。そして、ありがとう神様。
ラッキーだ。ラッキースケベだ。やっぱ不意にくるのが一番――
「――どんなものをお探しですか?」
試着室付近でうろつく和美に女性の店員が話しかけてきた。その店員も女子大生くらいの年齢に見える若い店員だった。
「いえ、別に何も――」
勝手に悪いところを咎められたように感じて和美は瞬時に正気に戻った。
「気になる物があったらぜひ広げて見てください。そちらのトップスなんて今人気ですよ」
「あ、はい」
どこの店でも店員に話しかけられるのは苦手だが、ファッションに関しては初心者なので構ってもらうことにした。
「同じタイプでちょっと刺繍が入ってたりするのもあります――こんな色とか流行ってますよね――。あ、そちらはもうパンツですね」
言われた通り、和美がいくつか手に取って広げていくと若い店員は取り出されて見終わった服を器用に畳みながら話した。
「そちらの服ですと、今お姉さんが着てる服にレイヤードでもかわいくなると思いますね。ちょっとこちらで試してみます?」
若い店員は置いてあった全身鏡に和美を誘導するが、和美はさらっと言われた言葉の意味が分からなかった。レイ?なんだ?――
「え?」
「レイヤード試してみて頂ければ……」
そうじゃなくて、意味が分からないのだ。腰に巻いたりすることだろうか。
「上から羽織ってみて大丈夫ですよ」
それを聞いた和美は持っている服を着ようと袖を通す場所を探した。けれど表と裏も分からなくて、少し苦戦した。
「お姉さん……鈴の音って好きですか……?」
「はい?」
「こういう鈴の音って好きです?」
若い店員がひも付きの鈴を取り出して和美の耳にそーっと近づけてくる――
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