第2話 変わる体

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第2話 変わる体

 ある日ある時を境に僕の体には世にも奇妙な体質が備わった。  鈴の音を耳に入れることで僕の体は性別を変える。男から女へ、女から男へ。  誰かにこの体質が知られれば、とてつもなく驚かれるだろう。目を丸くして尻もちをついてしまうかもしれない。それは和男も同じだった。  最初に変化を味わったときはそりゃもう驚いた。いつ夢が覚めるのかと、ほっぺたを引っ張りながら自室の中を10周は走り回った。  しかし、寝ても覚めても自分の男の体は女の体に変わっていて、ずっと鏡に映った姿を眺め――膨らんだ自分の胸を揉むしかなかった。  和男は男に戻った手で口で、バイト終わりに同僚のおばさん連中からもらったお菓子を頬張った。どこの県のお土産の饅頭か分からないが、なかなか食べられない上質な味がして、しっとりと甘い餡子が口の中に広がる。  饅頭を半分食べると、立ち上がって冷蔵庫から1ℓの牛乳パックを取り出して飲んだ。饅頭やたい焼きのような餡子菓子には牛乳が一番よく合う飲み物である。残りの半分の饅頭を一気に口の中に入れて牛乳で流し込む。  変わる体になってからは前より腹が空くようになったと思う。いや、そんな気がしているだけかも知れないし、それとは別のことが関係しているのかも知れないが。  変わる体になってからまだ1年ほどしか経っていない。和男が19歳だった秋の夜、ある事件が起きて体が変わってから一年間自分の体のことを独学で色々調べているが分からないこともある。  何ができて何ができないのか、それを自分を実験台にして試した。そして、女の体を手に入れたのなら――  異性の体になれるのならやってみたいことなんて誰にでもいくらでもあるだろう。当然和男にも欲があった。しかし、今のところそれほど上手く悪用はできていない。誰かに自分の体質がばれて大騒ぎになるのが怖いし。
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