第3話 変わる日の始まり

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 あぐらをかいて座り、鏡もろくに見ないで工程を進めていく――10分もすればあとは口紅を塗れば終わりというところまでたどり着いた。  化粧と言えば、実家にいた頃に母がしていたかったるそうな作業のイメージが強くて時間のかかるものだと思っていたが和美の化粧は10分で終わる。  薄い口紅を塗り、所謂ナチュラルメイクという風に纏まった鏡に映る自分の顔は可愛かった。そう、和美ちゃんは可愛かったのだ。  すっぴんでも同級生の女子大学生の上をいっていると思う。バイトの同僚の堀内さんみたいなおじさんだけでなく、男なら皆この顔を見て喜ぶだろう。男だからよく分かる。  バイトに行くにはちょっと派手に感じる赤いセーターに腕を通し、ダンベルの下敷きになっていたズボンを履く。小型の鈴を鞄のポケットに忘れずに閉まったら出掛ける準備はOK。最後にもう一度、鏡で顔を確認して自分の可愛さに笑えば、和美は玄関のドアを開けた。
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