第5話 遭遇

1/2
前へ
/18ページ
次へ

第5話 遭遇

 大小様々の店で目まぐるしい駅前……その中で最も綺麗なボディをしているショッピングモール……いや、これはアウトレットと言うのだろうか。とにかく若い女の子が次々に出入りしているその場所へ、和美も足を踏み入れた。  家にある中で最も女の子が着ていてもおかしくない服を選んだつもりだが、いざ自動ドアを抜け入口に立っただけで、もうオシャレ度が周りと一回り違う感じがする。アメリカのストリートにありそうな木造の店に、どこかの国の姫様でもくるのかというほど眩しい造りの店。男の体一つで来ていたら場違いすぎて立っていられなさそうだと和美は思った。  まずは、カフェかファストフード店くらいの座れる場所を探して、道行くティーンエイジャー達を見ようと思っている。大学でいつも若い女性の服装など見ているが本場でだいたいどんな服を買おうか考えながら勉強させてもらう。  和美はざっと店内にある各店を動物園の動物たちを見るような感覚で楽しみながら歩き回った――。20分ほど時が経ち、辿り着いたのは通路に置かれたベンチ。カフェは見つけたが、入口のメニューに聞いたことのない異国の言葉しか書いてなかったので入るのをやめた。値段も高かったし。  スマホを取り出してはいるがスマホ越しにチラチラと見るのではなく、堂々と見る和美。指先から付けているアクセサリーまで見ていると、時折見られていることに気づいた女と目が合いそうになる。そういう時は自然に首を別方向に動かして、それ以上のことはしなかった。女の体でいる時には積極的でいられる。  うーん。男はあんまりそういうの好きじゃないんだけどな――ああ、これはいいかも。  だいたいどんな物が流行っているか掴めてきて、その中で自分が気に入りそうなのも見つかる。さらに隅々まで見て分かったのは和美のファッションには細かい部分が足りていない。ネイルもしてなければ履いている靴はヒールではなくスニーカーなのだ。  細かい部分まで揃えればかなり値段が張ってしまうだろうか――バイトの給料を全てここにつぎ込みたくはないが。とりあえず店に入って値段を見てみようか。  和美はベンチから立ち上がり正面にあったSALEの看板がある店へ入る。そして、適当に目に入った服のラベルをいくつか見ていった。  ああ、やっぱりこのくらいするよなあ……うーん……つーかこの体の服のサイズどのぐらいだろ……。  その時――近くでカーテンが開く音がして、和美は条件反射的に反応した。試着室のカーテンが開いていて中に下着姿の目測女子大生がいる。下着姿でカーテンを開けたまま――友達らしき女と服を持ち会話する女子大生は、しかもかなりの巨乳だった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加