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サイゴノシャシン
先輩の死の知らせが入ったのは、今の部屋に移って三日目のことだった。
突然の訃報に、僕達後輩も驚いて駆けつけた。なんでも、夜中に苦しんでドタバタ暴れていたのを下の階の人が気づいて、管理人さんに連絡して鍵を開けてもらい、倒れている先輩を見て救急車を呼んだのだという。
救急車が来た時点で、既に先輩は息がなかった。死因を調べてもはっきりしたことはわからず、急性の心筋梗塞だろう、ということになった。
ドアや窓には鍵がかかっていたし、監視カメラにも怪しい人影などはなかった。毒物も検出されなかったことから、事件性はないということだった。
僕ら後輩は、先輩のご両親に頼まれて先輩の荷物を引き取りに向かった。
「先輩、ついに地縛霊に祟られちゃったのかな」
誰かがぽつりと言った。誰もがそう思っているのは明らかだった。
だが。
部屋に一歩入って、僕は何となく違和感を感じた。
──この部屋は、明るい。
先輩が入居した時は、空気がもっとじっとりしていたように思う。今はなんと言うか、すっきりと明るい。
先輩が来たから、陰の気が払われたんだろうか? でも、そんな部屋で死ぬ程祟られたりするんだろうか?
釈然としない気持ちを抱きながら、僕は皆と一緒に部屋を片付けた。ご両親からは、譲って欲しい物があれば各々一つだけ持ち帰ってもいいと許可を受けていた。
僕は迷わず、カメラを手に取った。先輩がいつも手にしていた、あの二眼レフカメラを。
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