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木彫りの衣冠束帯の男の像が姿を現す。
「……神像ですね」
仏像などと比べて、日本の神様の像というのを見る機会はあまりない。
神様のお姿を描いたり彫ったりするのは恐れ多いと考えられ、あまり作られなかったこともあるし。
作られたものも、御神体として、神社の奥深くに安置されたりして、一般の人間の目に触れることはあまりないからだ。
神様っぽいものはその像を見ながら言ってきた。
「ほんとうにこれが神様の像だったのか。
それすらも今となってはわからない。
誰かが戯れに彫ったものを、飢饉か疫病の流行った年に、この村の者たちが祀ったようだ。
……私は彼らが思うような万能の神ではない。
私は、長い年月、みながこの像を拝み、大事にすることによって生じた、この像の付喪神なのだよ。
この辺りに住む者が少なくなっても、みな、私を大切にしてくれた。
拝まれるたび、申し訳なくてな。
私は、いつか誰かに。
私が見える誰かに、この真実を語りたかったのだよ……」
付喪神を名乗る男はそう言った。
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