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付喪神は、九十九神とも表される。
九十九年、つまり、長い年月経った物に宿る精霊だ。
「美園の本体が先日、野犬に蹴られて割れたのだよ。
それで、美園は此処が潮時と生まれ変わろうとしているようなのだ」
そう付喪神様が教えてくれる。
新しい器にだろうか。
それとも別のなにかにだろうか――。
「だから、お前に教えるか迷ったのだが。
まあ、まだ美園の霊は本体の近くにあるから、少し話してみるがよい」
「あ、ありがとうございますっ」
と壱花が頭を下げると、うむ、と付喪神様は頷いた。
「美園が何処におるのか、わかるか?」
と付喪神様は訊いてくる。
「……はい、たぶん」
と言った壱花は思い出していた。
美園が好きでよく着ていた海老茶色の着物のことを。
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