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「美園さん、美園さん」
参道に戻った壱花は、あの大木の根元にある割れた茶色い急須に話しかける。
「美園さん、美園さん。
美園さーんっ」
「やかましいわっ」
という声がして、腕組みした美園が海老茶の着物を着て現れる。
大木の前に立っていた。
「壱花と話したら未練が出るからと知らぬフリをしていたのに余計なことを」
と美園は壱花と居た付喪神様を睨む。
「千代子が寂しがっているらしいぞ。
もう少し此処にとどまってみてはどうだ?
私も村人のために神様のフリをつづけることにしたから」
と付喪神様が説得してくれる。
「なにがフリだ。
お前はもう立派に神をやっている」
と美園も壱花と同じことを言う。
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