1168人が本棚に入れています
本棚に追加
「それに比べて、私は人同様の生活をしているだけで、特に誰かの役に立っているわけでもない。
みなには遠くに息子たちがいると言っていたが、突然、この世に生じた私に親族などいない。
すっと消えて生まれ変わってみるのもいいかと思ったのだが」
と言う美園に壱花は言う。
「美園さんは役に立ってますよ。
あ、役に立ってるっていうのも変ですけど。
みんなを明るくしてくれるし、私に名前をくれたし」
「そうです。
壱花が化け化けなおかげで、俺も少し駄菓子屋の仕事が楽になりましたし」
と美園さんのためにかもしれないが、倫太郎が滅多に言わないようなことを言ってくれる。
「おばあちゃん、美園さん来なくて寂しがってますよ。
……でも、美園さんが生まれ変わりたいのなら、止める権利は我々にはないですけど」
と言うと、美園は少し考えている風ではあった。
憑いている物が壊れたのなら、すっぱり生まれ変わろうというのは、如何にも美園らしい発想だが。
やはり、不安もあったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!