エピローグ

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「そうだ。  付喪神といえば、さっき奥の方でなにかが付喪神になってたよ」  ……付喪神になってたよ!?  壱花たちは奥の座敷を振り向いた。  そちらから、ぼそぼそと誰かが話す声がもれ聞こえてくる。 「ちょうど九十九年だか、百年だか経ったみたいでさ」 と高尾が笑った。 「……コーヒーガムの精ですかね?」 と後ろを窺いつつ言う壱花に、倫太郎が、 「だったら、見つけても腐ってるだろう」 と言い、座敷に続くすりガラスの戸を開ける。  座敷に上がってみると、押入れから声が聞こえていた。  倫太郎が、そっと開けてみる。  声がはっきり聞こえ出した。 「……しとしとと雨の降る丑満時(うしみつどき)、寺の廊下を歩いていると、誰もいないはずの本堂から、みしりみしりと床を踏みしめ、こちらにやって来る音が……」  押入れの中、行李(こうり)の上にころんと置かれた一本の蝋燭(ろうそく)が怪談を語っていた。
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