一 邂逅

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「いやあ、本当にありがとうございます。見違えるばかりに綺麗になりました。本尊も定めし喜んでおります。」  としなやかな籾手をしながら、微笑を浮かべて寄って来た。うんうん、例の爽やかすぎる笑顔だ。 「ああ、しばらくですね。何か解らないけど、あの日以来、妙に此処を掃除するのが気に入ってしまって、僕も妙な心持ちです。」  俺は自分の気持ちを意外に素直に言ってしまっていた。 「いや、きっと本尊と土橋さんには縁が有るのですよ。ところで土橋さん、博打はお好きですか。」  古井根は突然こう尋ねてきた。 「ええ、ギャンブルですか? いや競輪競馬とかはやりません。ああそうだ、パチンコじゃなくてパチスロなら一時嵌まってましたね。」 「ああ、あのスロットを回して当たり目が出るとコインが増えるやつですね。今日この後、特に予定は無いですよね。」 「まあ、家に帰って暇を潰すだけです。」 「では、一つそのパチスロというのをやってみましょうよ。行きつけの店は有りますか。」 「うん、割と近くに大店舗が有りますけど。」  最近あまりツイて無い俺は乗り気薄なのだが、妙にこの古井根には逆らえないものを感じている。  二人して、パチンコ屋に向かった。近くなので、歩いて行った。そのパチンコ屋は午前九時三十分開店だ。今は十時、平日なので満員とは行かない。それでも四分の一位の台が埋まっていたから、この時節流行っている方だろう。  俺は、爆裂系と呼ばれるギャンブル性の高い機種の一つに座って、台の隣に付けられているコイン販売機から一回分のコインを買って早速勝負を始める事とした。  知ってる人は知ってるだろうけど、知らない人のために説明すると、一般的にパチスロというのは一人一台の機械の前に座り、その機械にコインを投入して機械に取り付けて有るレバーを叩くと(レバーを叩くという言い方をします。軽くですよ。力任せに叩くと機械が壊れて従業員がすっ飛んで来ますから)、機械に付属する三つのリールが回る。そして三つのストップボタンを押すと、それぞれリールが止まる。一つのリールに幾つかの絵柄が有り、三つのリールの絵柄の揃い方で当たり外れとなって、コインを得失する訳だ。最近の機械には液晶画面というものが付いていてリールの絵柄よりもそちらの液晶画面に展開される様々な映像によって当たり外れや当たりが近いこと事が示唆されてもいる。大量のコイン獲得が期待される映像が展開される場合も有り、そういうのを『熱い』と業界では言い習わしている。機械そのものが熱いと音声で知らせるような物もある。  そういうわけで、ってどういうわけだっけ。
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