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「しかし、あれだけの御利益が有るなら、古井根さん御自身で掃除すれば良いのでは。何で僕に声を掛けたんです。」
俺の疑問に、
「私にはそう出来ない訳が有りまして。」
と言って、古井根は少し黙った。言うか言うまいか少し迷っているようだった。
「土橋さんは秘密が守れる方ですよね。」
「勿論、守りますよ。」
どんな秘密なのか、少し怖くも有ったが、俺は好奇心が抑えきれずにこう答えてしまっていた。
「うーん、私と友達になってくれますよね。」
まだ古井根は迷っているようだ。
得体は知れないが、どう見ても古井根は温和な紳士にしか見えない。それに別に男にセックスを求めるような奴にも見えない。
「なるなる。マブダチになろう。」
俺は気易い返事をしてしまった。
「では。」
と言って、古井根は周りを見回した。まるで周りに誰も居ない事を確認している風情で有る。
突然、俺の視界が靄が掛かったように遮られた。しかし、それは一瞬の事で、直ぐに視界は戻った。だが、俺がそこに見たものは予想だにしないものだった。
社を背にして、一匹のそれは大きな白狐が四つ脚で立っていた。その大きい事、シベリアンタイガーほどもあるだろう。しかもそいつの尻尾は何と九つに割れていたのだ。
見てはならないものをみてしまった・・・・・・・知ってはならないものを知ってしまった。
「私が本尊です。流石に本尊が自分で自分の社を磨き立てるのは差し障りが有りまして。」
と白狐は古井根の声で言った。
秘密は守ります。何が有っても守ります。俺だって命は惜しい。九尾の狐相手に事を構えるような度胸なんて有りません。俺は呆然とそう思っていた。
それが俺とキュービーの馴れ初めだった。
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