三 闇の又闇

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三 闇の又闇

 前回、キュービーの仕事に諜報機関に関わる危険なものもある事を知った俺だが、キュービーも俺の身を案じたのか、多少は護身の技も身に付けた方が良かろうと、俺に向けて印字を結び何か術を掛けた。そして、それから何十袋からの薬包みを寄越して毎晩寝る前に飲むように言った。  相手は千里眼で、俺が指示に従ってるかどうか等は端からお見通しなのだから、いやも応も無い、言うとおり毎日服用して寝る事とした。  毎晩、夢を見た。可愛い娘ちゃんに取り囲まれる夢ならいざ知らず、得体の知れない何体もの黒い人もどきに襲われる夢だ。妙な夢見で、夢の中でああこれは夢だなと意識してるのだけど、襲いかかって来られると反射的に躱したり、隙を見て反撃したりと、半ば無意識に夢の中で毎晩毎晩暴れていた。  一月が過ぎて、風呂上がりに自分の身体を見て驚いた。俺は、少し肥満の気がある体質で、目立つほどでは無いにしろ、腹も多少出始めて気にしていたのだが、今見てみると腹筋は綺麗に割れて、胸筋、背筋隆々の細マッチョになっている。ここのこころ、妙に身体がゴツゴツして来て、腕力が上がってる気はしていたが、まさかこれほどの状態になっていようとは。思うに、この術や秘薬だけで、キュービーは巨万の富を得る事が出来るのではないか。  この間も俺は、例の社の掃除は欠かさずの日課であり、古井根企画へも出社している。  池畑女子社員は土日は休みで世間通常の勤務なのだが、俺に休みは無い。労働基準法違反ではないかって話も出そうだが、俺に不満は無いし、いつの間にかキュービーは俺を役員待遇にして専務取締役の肩書になっていた。古株の池畑女子社員から不満が出はしないかとチラと思ったが、それは無いらしい。彼女の月給は同年代の一般的社員の倍は有るらしいから、結構高給取りだ。古井根企画の表向きの業務は経営コンサルタントだと言うことだ。結構な数の会社から顧問料の名目で入金が有るらしい。俺はそれには直接関わってないので、こんな言い方しか出来ないが。その手の金の出入りは専ら彼女の領分で、時々話に聞くのみだ。  土日は池畑女子社員が居ないので、俺とキュービーの二人のみだ。有名どころの羊羹などを食しながら、雑談ばかりしている。と言っても、多くはキュービーが喋るのだが。何せキュービーは博識で、古代文明の話から近現代史の裏側まで識らぬ事はない。全知全能の神みたいな奴だ。今日は日曜日、二人きりなので秘密の話も出来るわけだ。 「そう言えば社長、ここのところ僕が飲んでる薬。売り出せば大儲けできると思いますが、販売してるんですか。」 「販売してませんよ。秘密の秘薬ですので、誰にも秘密で宜しくね。」
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